とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
他に変わった所はなく、そこに誰が居たかも特定出来る物は無かった。
アンダーソンは廊下を戻り入口まで来ると、二階も一応見て回る。
屋根裏から時折ゴソゴソと音が聞こえた。
ネズミかコウモリでも巣くっているらしい。
『証拠はないか…』
屋敷を出ようとして彼は足を止めた。
足元の大量の“灰”…。
彼はポケットを探りタバコを取り出すと外側のフィルムにその灰を掬った。
鑑識に居る友人に頼めば何か解るかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら屋敷を後にするのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その後ラナの同級生に教えて貰ったクラブにも行ってみた。
美人で面食いのラナは好みの男なら誰でも誘いに乗る、軽い女で有名だった。
ラナの好む男は分かりやすく、細身で色白ないわゆる草食系だったらしい。
『いつもネジが飛んじゃってる感じだったからドラッグでもしてたんじゃない?』
ラナをよく知る常連の女はそう言って笑った。
学校では優等生。
裏ではただのジャンキー。
最近の若者の考えている事が判らない。
アンダーソンは一気に疲れを感じ、華やかで喧しい店を早々に後にした。