とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
友人はDNAの照合をしてみると言っていたが、他の依頼人ならまだしもラナは優等生だ。
恐らくデータベースになくて一致しないだろう。
アンダーソンは午後に比較サンプルを持って鑑識に行くと伝えて電話を切った。
『…なんか大変な事になっちまったな…』
人骨が出てしまった時点で探偵である自分はもう手が出せない。
『…殺人ならまだしも“吸血鬼”と来たか~…』
だがアンダーソンは非科学的なその考えを全力で否定出来ない自分がいた。
過去に一度彼が非科学的な事件に遭遇しているからだ。
回転椅子に凭れて軋む音を聞きながらアンダーソンはあの事件を思い出す。
生きたように這う水流…
太陽の中に見えた人影…
今考えても納得のいく答えが出ない。
アンダーソンは今回もまた納得出来ないままになってしまう事を考えると悔しかった。
ラナの母親に比較サンプルとして彼女の使っていたブラシを預かり、鑑識を目指す。
入口でダンの姿を見つけた。
そうだ、彼だってあの屋敷に居た。
もしかしたら何か知ってるんじゃないか?
『ダン!』
『警部!またお会いしましたね~』
にこやかに微笑む彼を人気のない場所まで引っ張る。