とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『売れたんですよ、あの屋敷!許可なく入ったら不法侵入ですからね!』
アンダーソンはその言葉に愕然とした。
『なんとか礼状取れんか?』
『…何でそんなにこだわるんです?警部はもう退職されたんですから、首突っ込まない方がいいですって!』
ダンにそう言われて返す言葉に詰まる。
『…世の中には説明のつかない事件があるんだよ…』
上手く説明出来なくてアンダーソンは悔しそうにそう吐き捨てた。
『警部…大丈夫ですか?』
心配そうに自分を覗き込むダンに頷くと『またな』と鑑識課へと向かった。
アンダーソンを出迎えた友人は彼の覇気がない様子に首を傾げた。
『電話の時の勢いはどうした!?』
『未だに刑事気分が抜けなくてよ…上手くいかねぇなぁ~』
愚痴を溢すアンダーソンに友人はクスッと小さく笑った。
『まだ事務所立ち上げたばっかだろ~が!俺だって困ったら助けてやるから愚痴るな。』
アンダーソンが『そうだな』と笑う。
友人は『定年になったらよろしくな!』とおどけた。
『ところで比較サンプルはどれだ?』
『ああ、これだ。』
アンダーソンは紙袋からラナのブラシを取り出した。