とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『お前、自分の荷物くらい自分で運べよ…』
そう言って屋敷から出てきたもう一人の青年はアンダーソンを見て眉間に皺を寄せた。
『…おっさん何してんの?』
『えっ!?…いや、ちょっと覗きに…』
しどろもどろでそう答えたアンダーソンに彼はプッと吹き出した。
『ナニはっきり“覗き”なんて言っちゃってんの?…おっさん面白いな~…』
ゲラゲラ笑う青年を月が照らす。
少し細目の端正な顔立ちをした青年だ。
長身で長めの銀髪はサラサラと揺れ、先程の青年とは違った雰囲気の持ち主だった。
『早いとこ帰んな、おっさん。化け物出るかもしれないぜ?』
『右京さん…化け物なんて…人聞きがわるい!』
『お前はいいから早く荷物片付けろ!』
むすッと膨れっ面をして銀髪の青年を睨む。
『なんだよ…』
『…ケチ…』
『黙れ!頭カチ割るぞ!?』
チラッとこちらを見て溜め息つくと色白な青年は屋敷へと戻って行った。
『じゃあな、おっさん!』
『あ…なぁ君…!…どこかで会った事ないか?』
『…無いと思うけど…俺、人の顔とか覚えるの苦手で…』
─気のせいか…
アンダーソンは『そうか』と短く答えて溜め息をついた。