とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~
第四章

石碑





外の空気が少し冷たさを増し、いつの間にかすぐそこまで冬が近付いてきていた事に気付いた。



出版社の屋上から見る景色はほのかに色付き、黄色や赤の紅葉が舞い散る。




「…もうすぐ冬かぁ…」




ポツリと呟いた忍に先輩の谷地が「何よ、急に」と笑った。




この出版社に入社して早半年。




仕事にも慣れ、ついでに手の抜き方も覚えた。




「谷地さん、彼氏とうまくいってます?」




「別に変わりないけど…忍はうまくいってないの?」




「私も変わりないです…」




「なんだ…じゃあいいじゃない」




溜め息混じりに谷地は忍にそう言ってサンドイッチを頬張る。




変わりない事はいい事なんだろうが…




─…物足りない…




そう感じてしまうのは側に居ないからかもしれない。




「遠距離恋愛だもんね~…寂しい?」




「そうですね~…でも慣れました。」




右京も右京なりに色々忙しいみたいだが、ほぼ毎日メールをくれる。




たまに電話もして声を聞くと会いたい気持ちが募る。




「どんな彼氏なのか会ってみたいわね~」




「年末帰って来るらしいので紹介しますよ。…ちょっと変わってますけど…」




はにかむ忍に谷地は「楽しみ~」と笑った。




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