とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バスルームまで追い掛けて行くと振り返った忍が右京の胸に人差し指を突き付けた。
「…半径1m以内に入ったら投げ飛ばすわよ?」
「…はい…」
仕方ないので洗面台の脇に腰掛けてシャワーカーテン越しに説明する。
「…アイツはバンパイアなんだよ…」
右京が話をしている間、忍は一言も言葉を発しなかった。
「…だから、人間を襲わないように血を別けてやってんだ。…聞いてる?」
ちょっとカーテンに手を掛けて覗こうとすると逆にバッと開いて忍が顔を出した。
─うわっ…まだ機嫌悪い…
「…そんな怒るなよ…謝るから…」
バスタオルで忍を包み込んで困ったように微笑む右京を忍が睨む。
「…なんでそれが右京なのよ…」
「それって?」
「別に…右京が血をあげる必要なくない?」
「忍…」
「いっつもそうやって自分を犠牲にするじゃない!!」
「忍…」
たまらずバスタオルごと忍を抱き締める。
「…なんで…なんでそんなに馬鹿なのよ…!」
「そうだよな…。馬鹿だよな。」
怒る忍がたまらなく愛しい…。