とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「ちょっと行って来る。用意して待ってて」
そう言って出て行こうとする右京を「待って!」と忍が呼び止めた。
なんだろうと振り返った右京に忍は背伸びをして軽くキスをした。
「早く帰って来て。」
なんて言って「新婚みたい?」と首を傾げてみせた。
「やめて、恥ずかし過ぎる…」
真っ赤になって顔を両手で覆う右京を忍は楽しそうに見送った。
ひとりにやけながら倉庫へ向かう。
『…クロウ、不気味だから独りで笑うのやめた方がいいよ?』
開口一番アランにそう言われて笑って誤魔化した。
『うちの実家の持ち物が多すぎてね。使わないものは全部倉庫に入ってるんだ。』
アランはそう説明しながら壁に大きく“5”と書かれた倉庫の前で立ち止まった。
鍵を開けて中に入る。
『好きなのを使っていいよ。』
そう言いながら壁のスイッチを押して内部を照らした。
『…なんだこれは…!?』
ズラリと並ぶスポーツカーやバイクに右京は唖然と立ち尽くす。
『父親の趣味みたい。よくわかんないけど、好きにしていいって。』
一台一台見て回る右京に『どれがいい?』とアランはさらっと聞いて来た。