とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「着いた~!」
忍はリッチフィールド家に到着してヘルメットを脱ぐと、右京を置いて走り出した。
「迷子になるなよ~!」
右京の言葉にちょっと振り返って手を振る忍にふぅと溜め息をつく。
辺りの景色を見ながら忍の後を追う。
─のどかだな…
平和を絵に描いたような風景。
特に何か事件が起こった様子もない。
─ルシファー側の奴らは来てないのか…
「…なにやってんの?」
柵の向こう側を一生懸命覗こうとする忍を見て右京は吹き出した。
「笑うな~!…ねぇ右京ならあっち側見える?」
「植木が邪魔で見えないよ。」
「え~…ねぇ!抱っこして?」
「子供みたいだな…」
右京が忍を肩まで抱き上げると首を伸ばして向こう側を覗く。
「…無理だろ?どうせなら違うとこ見ようぜ?」
忍は右京の首に捕まって地面に足を付けるとちょっと首を傾げた。
右京が忍を連れて行ったのはウィンチェスター大聖堂だった。
「うわぁ…素敵ね!」
早く早く!と急かす忍に手を引かれて聖堂に足を踏み入れた。
─まるで観光だな…
たぶんすれ違う誰もが観光客だと思っているだろう。