とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「もし、俺が人間だとしたら…後世に絶対ヒントは残す。」
「それが石碑の暗号なんじゃないの?」
「かもしれないけど、あれだけじゃまず解読不可能だよ。」
「…そうか…!“ヴォイニッチ手稿”ね!?」
「あと気になってるのはあの“絵”だ。なんて書いてあったか覚えてる?」
「“我はアルカディアにもある”」
「アルカディア“に”…じゃなくて“にも”だ。」
「…それが?」
「ヒントはここだけじゃないって事さ。」
「まぁ、憶測だけど」と言う右京に忍は目を見開く。
「凄い!…意外と冴えてるのね!?」
「…“意外と”は余計だろ?」
だが右京はここに来て確信した。
─鍵は1つじゃない。
ヒントはマンチェスター大聖堂にも隠されてた。
正確にはその存在自体がヒントだった。
─ここは“三位一体”の聖堂…。
本来は“父・子・聖霊”を一とする考え方だ。
つまり3つ揃って初めて意味を成す。
忍にそれを言うと「なるほど」と手帳にメモを残した。
「P2に帰ってメンバーとまた討論しないといけないかもな。」
「それ、私も参加しちゃまずいかな…」
期待の眼差しを向ける忍にヘルメットを被せてポンと叩いた。
「…そんな目で見られると俺断れないじゃん…」
─甘いなぁ…俺。
小さく溜め息をつくと、ドゥカティのエンジンを掛けた。