とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
アルカディア
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右京と忍がアパートに戻って来たのは日が西に傾き始めた夕方だった。
鍵を取り出し部屋を開けようとして、施錠が外れている事に気付いた。
「…もう帰って来やがったか…」
誰と聞かなくても判るその人物に忍も同時に溜め息をついた。
『待ってたよ、ハニー!』
両手を広げて忍にハグをするニックを右京がすかさず引き剥がす。
『早かったな…手に入ったのか?』
『完璧だよ。ロイから最新型の小型カメラを借りたからね。』
彼はそのカメラでヴォイニッチ手稿を一ページずつ画像に収めたらしい。
『単調作業で肩が凝ったよ。』
『ご苦労様でした。コーヒー入れますね。』
そう言う忍に『甘くしてね~』なんて注文を付ける。
『そっちは?』
『リッチフィールドに行って来た。』
『庭園は入れないだろ?』
『入れないさ!…うちのじゃじゃ馬が言うこと聞かないから…』
キッチンから『聞こえてるわよ!』と言われて右京はわざとらしく首を竦めた。
『ハハハ!想像つくよ。…で?デートして来たの?』
『マンチェスター大聖堂に寄って来た。』
ニックは『なるほど』と頷きながら忍からマグカップを受け取った。