とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




そんな忍にニックが『アルカディアはね…』と説明した。




『実はギリシャ、ペロポネソス半島中央部の農耕に適さない貧しい山岳地帯なんだ。』




『意外!…楽園みたいな所だと思ってました。』




『いや、古代アルカディアの住民は牧畜を主体として生活していたらしいからね~…昔は楽園だったのかもしれない。』




“アルカディアの牧人たち”もその事が背景にあり楽園伝承が生まれたと言われている。




『だけどね?あの絵はバロック時代の絵なの。
古代アルカディアから15世紀以上も後に描かれてるわ。』




『…じゃあ、作り話って可能性もありますね…』




『だからアルカディアがユートピアと同じ意味で使われるんだろうな。』




『ユートピア…つまり実際にはない“桃源郷”…
だとしたら、“アルカディアの牧人たち”に書かれてる“アルカディア”って…何処?』




『いい質問だね』とアランは微かに笑みを浮かべた。




『“アルカディアの牧人たち”を描いた画家を知ってるかい?』




『ニコラ・プッサン?』




『彼があの言葉を残したのは“アルカディア”の場所を知ってたからさ。
…アルカディアは“ユートピア”じゃない。“ユーサイキア”だ。』




“ユーサイキア”…実在する理想郷…!




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