とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バンッ!!と大きな音を立てて資料を力一杯閉じる。
右京はワシャワシャと銀髪を掻きむしると、肩を震わせて笑いを堪えているロイとダンを睨んだ。
その視線に気付いて二人はわざとらしく首を竦めた。
『はぁ…走って来るわ…』
集中力が切れて時間の無駄だと判断した右京はパーカーを羽織ると夜の街へ踏み出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
夜中の広い公園を疾走する。
ただ無心に走って走って走り続ける。
次第に気持ちが落ち着き、くだらない事で腹を立てていた自分がおかしくてなって来た。
「…馬鹿みてぇ、俺…」
そろそろ戻ろうと公園を出ようとした時、不意に何かが聞こえた。
立ち止まり辺りを見回す。
─…たす…てっ!…誰か…!
微かに聞こえたその声の方向へと弾かれた様に走り出した。
─…何処だ…?
『きゃああああああああ!!』
確かに聞こえた絶叫に右京は振り返って闇を睨む。
しゃがみこんで後退りをする女性の姿が視界に入った。
その女の側に立ち尽くす人影…。
『…おいっ!』
右京の声にその人影がゆっくりと動いた…。