とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
彼女は差し出された手に一瞬ビクッと肩を震わせたが、右京の顔を見て表情が少し和らいだ。
『ぁ…ありがとう…』
右京に支えられてよろけながら立ち上がる。
『…なんだったの…?』
『さあな…怪我は?』
『大丈夫…ちょっと膝を擦りむいただけ…。』
そう言って弱々しく笑う女を見て右京も安堵の息を着いた。
『家どこ?送ってくよ。』
『わ…悪いからいいわ…大丈夫よ。』
『あのねぇ…あんな事があったのに遠慮なんてするのはおかしくない?怖いんだろ?』
説教じみた右京の言葉に女はちょっと吹き出した。
『判った。送ってもらうわ。』
暗い夜道を歩きながら女と世間話をする。
『あなた大学で見たことあるわ…確か“クロウ”でしょ?』
『そう!…もしかして、俺って有名人!?』
『フフフ…有名と言えば有名ね~。一回死んだらしいじゃない?』
『あ~…あの噂か…ったく酷いよな~』
叔父の適当な理由のせいでもはや収拾できない程広まった噂。
弁解すらする気になれなくてスルーしてるが、右京の知らない所で未だに拡大してるのかもしれない。