とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
彼女は『ここでいいわ』と寮の入口で立ち止まり手を差し出した。
『私、ジュリア・ポートマン…経済学部の2年よ。』
『ウキョウ・クロサキ。…寮生だったのか…覚えとくよ。』
握手を交わすと長いストレートの黒髪を靡かせてジュリアは寮に走って行った。
その後ろ姿が忍と被りちょっと寂しくなった。
『…さっさと課題終わらすか…』
歩き出した足を止めてふと寮を見上げた。
─…アランに報告しとくかな…
さっきの野獣を思い出し、右京は男子寮へと向かいながらアランに電話をかけた。
『やぁ、クロウ。部屋に居るよ。』
まだ何も言ってないのにそう言われ、ハッとして自分の身体をまさぐる。
『どれ!?…どれに発信器入ってんの!?』
アランは『携帯だよ』とシレッと答えた。
─つか…いつの間に!?
『早くおいで。部屋の鍵は開けとくから。』
通話の切れた携帯を暫し見つめる。
『……まさか盗聴はされてないよな……』
後で確認しようと考えながら男子寮の扉を開けたのだった。