とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




ニコールから連絡があったのはその日の夕方だった。



『新庄さんから聞きました。
取材ですか?』


『そうなんだ。ちょっと興味深い話を聞いてね。
詳しくは直接会った時に話すよ。』



毎度お決まりの台詞に嫌な予感しかしない。




『…念のため聞いておきますが、何処へ行くんですか?』



『魅惑の地、“セントルシア”だよ!』




イギリス領だった島国としかわからない。



『とりあえず、良い旅にしようではないか。』



『…はぁ…』



『テンション低いよ~?
折角二人きりで旅行な…』



『じゃ。また。』




まともに話を聞いたら永遠続くだろうニコールとの会話を問答無用で終了すると、残務処理に追われるのだった。




とりあえずイギリスまでのチケットを取り、早めに帰宅して荷造りを開始した。




寝る前に手帳をチェックしていて右京の漆黒の羽根を手に取った。



「…時間作って探しに行くから…」




ポツリと独り言を呟いてその羽根を手帳に挟むとバックへしまった。




両親はあの一件の後、右京の大学に休学届けを出した。



本当は右京がいつ帰ってくるかわからないから退学届けを出そうとしたが、忍が頼み込んで止めた。



「右京は必ず帰って来るから…」



泣きながらそう言う娘のわがままを父は渋々聞き入れてくれた。



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