とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
そのページの“lycanthrope”という文字に右京は首を傾げた。
『“ライカンスロープ”…?ルー・ガルーじゃないのか?』
『狼人伝承は幾つかあってそれによって呼称が違うんだ。ルー・ガルーはフランスの語源で、ギリシャの場合は“ライカンスロープ”だね。』
『…これってさ…呼び方が違うだけ?実際別物って可能性ない?』
『…なんで?』
『実はさっきさ…』
右京はジュリアを襲った2mを超える野獣について話した。
『もちろん別物って可能性は否定出来ないけど、2m強の狼男なんてあり得ないと思う。』
アランは口元に手を当てて『ただ…』と付け加えた。
『ほぼ同時刻ってのが気になるね…』
『俺が見たヤツ…なんか不自然だったような気がするんだ…』
『…というと?』
『なんつーか…本気じゃなかったっていうか…』
右京がそう言うとアランはメガネを押し上げ『フェイク…?』と呟いた。
『何が?』
『わざと姿を晒したんだとしたら?』
『見つけられる為に…?意図がわかんねぇよ。』
『同時に現れたのが無関係じゃないって事を意味してたとすれば…?』
だとしたら狼人は野獣の指示で動いてる?