とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ロイから送られ来たポイントに到着すると右京は『おい…』と低い声を発した。
『思いっきりマスコミらしき車が停まってんだが…』
『まぁ、想定内だよ。さっき渡したアレはあるか?』
シャツの上から腰に手を当て、そこにある冷たいグレネード(手榴弾)の感触を確認した。
アランが言うには催涙弾…つまり投げると催涙ガスが噴射されるらしいが、出来れば使いたくない。
『テロリストな気分だ…。』
『テロリストか!お前にピッタリじゃねぇか!』
…ロイの笑い声が物凄く癪だ。
『無線はどんな感じ?』
『至って平和だ。3番街のウィーバー宅で旦那が暴れちゃうくらい平和だ。』
『あ~…そりゃ確かに平和だ。』
右京は雑居ビルの縁に座って道行く人々を眺める。
ランニングをしている男性や、買い物袋を抱えた主婦…それに玄関先でイチャつくカップル…。
─俺も忍とイチャつきてぇな…
そういえば昼間ニックから入電があったらしいが、あっちには狼人は現れていないらしい。
まぁ、ニックの気付かないところで潤が動いていた可能性もあるが、忍が無事ならそれでいい。