とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京が大きな溜め息を着いた時、インカムのピッという機械音が聞こえた。
『お出ましらしいぜ!』
ロイの声に右京は立ち上がり闇に目を凝らす。
『何処だ…!?早く言え。』
『待て、焦んな!』
身体が疼き落ち着かない。
─早く暴れたい…!
自分に対する嫌悪感も忍が傍にいない虚無感も全て暴れて消し去りたい…そんな気分だった。
無意識に力が籠る拳を開いたり閉じたりしている自分に気付く。
─焦んな、俺…!
ふぅ…と静かに息を吐いて深呼吸をする。
『…まだか…!』
『通報者がターゲットに追われてるらしい…よし!そこから西に1.5km…暴れてこい!!』
右京の心を読んだようなロイの台詞に口角を上げる。
『ラジャ…!』
西に向かって走り出し空を舞う…。
─身体が軽い…!
リズムを刻むよう駆け抜け、ビルから舞い降りた。
インカムから『近いぞ』と聞こえて、右京は一旦裏路地で立ち止まった。
腕の端末に赤いポインターが点滅している。
瞬時にロイが最新の情報を送ってくれているのだと気付いた。
─…移動してる…
右京はそれを確認して気配を殺しながら近付いて行く。