とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
─おいおい、強ぇじゃん、コイツ!
メキメキと下のコンクリートが割れる音が聞こえる。
右京は苦痛に耐えながら胸ポケットを探り発信器を取り出した。
『…腹、減ったろ?』
そう言って発信器を掴んだ拳ごとバフォメットの口に突っ込んだ。
怯んで巨体がぐらつく。
その一瞬の隙をついてバフォメットの腹を思いっきり両足で蹴り上げた。
尻餅をついた巨体に向かってフルスイングで思いっきり腕を振り抜く。
よろめいて後ろに数メール後退るバフォメットに右京が右手を突き出し…
パァン!という弾けた音と共にバフォメットの左角が粉砕した。
─グゥオオォォォン!
流石に利いたらしいそれにバフォメットが叫び声を上げた。
軽く頭を振ったかと思うと、もの凄いスピードで右京に向かって来る。
─げぇぇっ!?
両手を突き出して風の壁を作るが、それすらモノともしない。
『ヤバイ』と思った時には既に突っ込まれ右京が後ろに吹き飛んだ。
その最中、片手を着いてなんとか体勢を立て直す。
─仕方ない…
右京が背中の日本刀の柄に手を掛けた時、車のエンジン音が聞こえてバフォメットと同時に振り向いた。