とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~



P2から少し離れた所に停めたドゥカティまで歩きながらタバコを噴かす。




外野に色々と言われたがこれで良かったと思う。




浮気はしたらいけない事じゃなくて、自分にとって必要ない事なのだ。




ただやっぱり忍が傍に居ないのは寂しい。





右京は携帯を取り出して忍に電話をかけた。




「…忍?俺~」




「ホントいつも絶妙なタイミングで電話掛けてくるわね…。今税関通るとこよ。」




「仕方ないだろ?お前の声が聞きたいんだから…」




そう言うと少し忍が笑ったのが判った。




「ねぇ忍。俺寂しいよ…早く会いたい。」




「もう…なんなの?急に…」




「急じゃない。いつも思ってる。」




「うん、知ってる。私もだよ…」




恥ずかしそうに小声で言う忍に右京は少し満たされる。




「…そろそろ切るね。」




「ん。じゃあローマで…」




通話終了ボタンに手をかけたところで「あ、待って!」という忍の声に慌てて携帯を耳に当てた。




「私も早く右京に会いたい!…それだけ。じゃあね。」




そう言って一方的に切れた携帯を手に暫く思考が停止する。




「……な…なにそれ!!」




思わず口元に手の甲を押し付けた。




独りで赤くなってしまい恥ずかしい。




そしてにやける顔をヘルメットで隠してドゥカティのエンジンをかけた。




─明日一本早い便に乗ろうかな…





逸る気持ちを抑えながらそんな事を考えるのだった。





   ◇◇◇◇◇◇◇◇



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