とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
賑やかな店内で最高に旨いディナーを味わう。
中でもシェフご自慢の特性ピッツァは最高だった。
忍はワインが気に入ったらしく、ウェイターに“ロゼ”と告げている。
右京はその隣で何故自分が忍の正面に座れないのかを考えた。
答えは簡単だ。
“いつもの如くニックが邪魔しているから”
当のニックは全く悪びれた様子もなく、さっきから古代ローマについてずっと語っている。
─KYにも程がある…。
右京は忍に目をやると既に視界からニックを削除したらしく、黙々とパスタを食べて続けていた。
さすがニックの担当者なだけあるなとそのスルーぶりに関心する。
ニックの話はやっと5世紀に入り西ローマ帝国が滅亡した所だ。
はっきり言って西ローマ帝国も東ローマ帝国もどうでもいい。
心の中で右京は『むしろお前が滅亡してしまえ』と毒を吐く。
『でな?“シャルルマーニュの寄進状”によれば800年にローマ教皇に寄進されたとされるんだが、この文書は偽書じゃないかって言われてんだ!』
『…なぁ、ニック。その話まだ続くのか?』
『何を言ってんだ、クロウ!ここからが面白いんだ!』
─…駄目だ、こりゃ…
お手上げ状態で忍を見た右京に彼女は溜め息をついた。