とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
忍はグラスのワインをグビグビと一気に飲み干し、ダンッ!とテーブルに叩きつけた。
『…ニコール。そんな話知ってます。
どうせならもっと面白い話をしてくれます?
…前から思ってたけど、ホントつまらない男ですよね…』
忍の言葉に右京は血の気が引いていく。
─こっ…怖っ!
『あははっ!いつもシノブは厳しいなぁ~』
右京は相手がニックがで良かったと思った。
普通なら喧嘩になっていただろう。
彼が笑って流せてしまうのはニックが筋金入りのアホだからに他ならない。
だが、まるで馬鹿にしたかのような彼の笑い声に忍はぶちギレる寸前だ。
今にも掴みかかりそうな忍を慌てて宥める。
はぁ…と溜め息をついた所に『よぉ』と聞き覚えのある声が聞こえた。
『クリス!シンディも…!なんてタイミングのいい奴らなんだ!』
─まさに“天の助け”!
彼らに後光がさして見える…。
『忍が飲み過ぎちゃって…酔い醒まして来るから飯でも食ってて!』
早口にそう捲し立てて『まだ酔ってない』と騒ぐ忍を引きずって席を立った。
『ちょっと!…クロウ!?』
後ろからシンディが何か言って来たが『すぐ戻る~』と手を振って忍を店の外に連れ出した。