とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
店の外に出ると忍は右京に「ちょっと!」と声を荒げた。
「なにすんの!?まだ言いたい事があったのよ、ニコールには…!」
「そんなに酔った状態で?…やめとけ、ろくな事態にならない…」
右京の言葉にムッとして口を尖らせる彼女に苦笑すると肩を抱き寄せた。
「俺が話聞いてやるから。」
そう言われて忍はニックに対する愚痴を吐き出す。
自分勝手…人の話を聞かない…他力本願…図々しい…
まだあるのかと言うくらい羅列される不満に、右京は段々可笑しくなって来た。
「忍はニックが嫌い?」
「好きじゃないわ…。」
「…嫌いとは言わないんだな。」
ニックは忍に少なからず好意を寄せている。
右京は前から気付いていたが敢えて言わなかった。
…不安になるから…。
別に忍がニックに靡いてしまうとかではなく、ニックが行動を起こすんじゃないかが不安だった。
「ノヴァ・スコシアに居た時なんか馴れ馴れしくて本当に嫌だった…」
「…どんな?」
「やたらボディタッチが多いのよ!」
「……なに?」
「こう…なんていうか、さりげなく触れてくるような…気のせいかな~」
忍は嫌悪感をむき出しにしながら「うーん」と考え込んだ。