とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
辺りはすっかり闇に染まり、忍は宿まで無事に辿り着けた事にホッと胸を撫で下ろした。
クスッと笑い声がして隣の右京を軽く睨む。
「…今笑ったでしょ?」
「相変わらずだな~と思って。」
「しっ…仕方ないでしょ!?苦手なんだから~!」
「それでよくオカルト誌の編集者が務まるな…。ノヴァ・スコシアではどうしてたんだ?」
「俺が居たから心配ないよ。」
日本語で会話に入って来たニックを右京は横目で見て『interrupt…』と呟いた。
『interrupt(邪魔)!?酷い言われようだなぁ…』
『あ~悪い。俺、嘘つけないから。…どうでもいいから早く通信開けよ。』
ニックはブツブツと言いながらラップトップを叩き始めた。
忍はそんな二人を無視してシンディに話し掛けた。
『ギリシャはどうだったんですか?』
『あっちもルー・ガルー…もといライカンスロープがうじゃうじゃ居たわ…』
『クリスが居て良かった』と彼に意味ありげな視線を送るが、当のクリスは壁に寄りかかって黙ったままだ。
『ノヴァ・スコシアだけなんで居なかったのかしら…』
そう呟いた忍に右京は『居たはずだぜ?』と小さく息を吐いた。