とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~



サワサワと風が吹き、木々のざわめきに忍は振り返った。




一瞬感じた視線…。




後ろに居たニックと目が合い、彼が『なに?』と首を傾げた。




─…気のせい?




『…他も見てみましょう…』




丁度コロッセオの真裏部分には裏口があり、初老の男性が掃除をしていた。




ニックは『管理人かな』と呟いて彼に近付いた。



イタリア語で会話をする彼らを忍は傍で見ていたが、方言が強すぎて何を話しているの判らない。




だが、その雰囲気で男性が自分達に敵意は持っていないらしいのは判る。




『シノブ!中に入っていいって!』




『本当ですか!?』




男性は微笑みながら早口のイタリア語で何かを言っているが、忍にはサッパリである。




とりあえず笑って誤魔化す。




『雑誌で特集したいって言ったんだ』




『…うちの出版社、コロッセオの特集はしないですよ?』




『まぁ、ものは言い様だ。気にするな!』




毎度の如く、後先考えないニックに忍は溜め息をついた。




だが、コロッセオの中に入れるのは正直嬉しい。




忍とニックはお礼を言ってコロッセオ内部へ足を踏み入れた。




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