とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




管理人の老人はとてもいい人で、帰るときに声を掛けてくれれば好きなだけ見ていいと言っていたらしい。




─こんなに簡単に入れちゃって…管理人の意味無いわね…




人が良くても管理人としては問題がある気がする。




だが、その間抜けさが有難い。




忍は薄暗い廊下を歩きながら辺りに目を配る。




『バフォメットが何か探していたのなら、コロッセオに秘密が隠されてるはずですよね…』




『だろうね。…競技場への入口は何処かな…』




一歩前を歩くニックは扉の一つ一つを慎重に開けて調べて行く。




『あれじゃないんですか?ニコール…』




前方に陽の光が射しているのが見える。




近付いてみると開け放たれた両開きの扉があり、そこから競技場へと出る事が出来た。




右京の話を思い出し一瞬躊躇したが、目にした光景に眉を寄せる。




─…えっ?




そこには想像していたような惨状は存在していなかった。




ホッしたと同時に浮上する疑問。




“誰が昨晩の惨状を片付けた?”




隣のニックは何も言わず、ゆっくりと外へ歩き出した。




彼も自分と同じ疑問を抱いているに違いない。




ぐるりと見渡すと何ヵ所か崩れた壁があるのが判る。




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