とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『…ニコール…これって…どう解釈したらいいのでしょうか…?』
『…俺に聞くなって…』
まさか、右京達の手の込んだイタズラなのかとも思った。
─…そんな事あるわけない。
二人ともあんな悪趣味な嘘をつくタイプじゃなかったし、況して右京に限ってはあんな滅入っていた。
忍は崩れた壁に手を触れ、目を閉じて右京の目にした光景を思い浮かべた。
─チガウ…!コレハ俺ジャナイ!
彼の悲痛な叫びが聞こえた気がして胸が痛む。
両手で口元を押さえ、泣きそうな忍を見てニックはそっとその肩に手を置いた。
『…シノブ…』
『違う…右京じゃない…。』
『……』
『…ねぇ、ニコール…。お願いだから右京じゃないって言って…!』
肩を震わせて泣く忍をニックは後ろから衝動的に抱き締めた。
『シノブ…。やめちまえよ…そんな辛いなら、やめちまえ!』
『…ニコール…』
『“ニコール”じゃない。“ニック”だよ。』
思考が停止してその意味を理解するのに時間がかかった。
『…放してください…』
『嫌だ。放して欲しいなら自分から俺を振り払えばいい。』
いつもと違うニックに忍の鼓動が速くなる。