とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ニックを振り払えない自分が嫌になる。
『…俺はここにいるよ…』
『…イヤです…右京じゃなきゃ…』
『強がんなよ!!』
突然声を荒げて忍を自分の方に向かせる。
驚いてニックを見上げた忍に…
…彼はそっとキスをした。
「………な…に…?」
─…今何したの…?
『強がんな。見てらんないんだよ、アイツのせいで泣くシノブが!』
『………』
自分を包む空気が止まったような感覚。
放心状態の忍は誰かの視線を感じてハッと振り返った。
『…シノブ?』
『…誰か居る…』
『誰も居ないよ。…話を逸らすつもり?』
─…居る…!
忍に何かを言って来るニックに、手を挙げ黙らせる。
観客席を見渡す。
─…どこ…!?
あちこちから視線を感じ、緊張が走る。
忍のただならぬ様子にニックも辺りを見回した。
「…潤君…!」
微かに忍のピアスが煌めき、目の前の空間が歪んだ。
「…お呼びですか?」
「私…狙われてる?」
「…それはこの男にですか?それとも他の人物ですか?」
溜め息混じりにそう言う潤を忍は軽く睨む。
「…狙われてますよ…両方から…」
シレッとそう言う潤をニックも軽く睨んだ。