とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




ニックを振り払えない自分が嫌になる。




『…俺はここにいるよ…』




『…イヤです…右京じゃなきゃ…』




『強がんなよ!!』




突然声を荒げて忍を自分の方に向かせる。




驚いてニックを見上げた忍に…




…彼はそっとキスをした。




「………な…に…?」




─…今何したの…?




『強がんな。見てらんないんだよ、アイツのせいで泣くシノブが!』




『………』




自分を包む空気が止まったような感覚。




放心状態の忍は誰かの視線を感じてハッと振り返った。




『…シノブ?』




『…誰か居る…』




『誰も居ないよ。…話を逸らすつもり?』




─…居る…!




忍に何かを言って来るニックに、手を挙げ黙らせる。




観客席を見渡す。




─…どこ…!?




あちこちから視線を感じ、緊張が走る。




忍のただならぬ様子にニックも辺りを見回した。




「…潤君…!」




微かに忍のピアスが煌めき、目の前の空間が歪んだ。




「…お呼びですか?」




「私…狙われてる?」




「…それはこの男にですか?それとも他の人物ですか?」




溜め息混じりにそう言う潤を忍は軽く睨む。




「…狙われてますよ…両方から…」




シレッとそう言う潤をニックも軽く睨んだ。





< 422 / 461 >

この作品をシェア

pagetop