とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
潤はニックを睨み返し、フンッと鼻を鳴らした。
「あそこと…あそこ。それからあの上です。」
潤が忍にそう言うと彼女は一歩前に出て声を張り上げた。
『居るのは判ってます!出て来なさい!』
強気な忍にニックはちょっと焦った。
『シ…シノブ!?…ヤバくない?』
『大丈夫です…多分…』
─多分って…
ゴクリと唾を飲むニックに忍はこう言った。
『殺すつもりならとっくに殺ってますよ。』
アカディアでは自分の知らない所で動いてくれていた彼が落ち着いている。
それは殺意が感じられないからだ。
『さすが忍様ですね。』
黒髪を靡かせて微笑む悪魔に忍も口角を上げた。
『…さっきの件、見なかった事にしておきます。』
『えっ…見てたの!?』と驚く忍に潤はニッコリ笑った。
─…最悪…。
潤が指差した辺りを睨みながら溜め息をついた。
ふと現れた人影がゆっくりとこちらへ近付いて来る。
『貴方達…何者…!?』
そう言う忍に彼らは『それはこちらの台詞です』と答えた。