とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




無表情だった男がフッと笑った。




『やはりクルースニクの知り合いでしたか。』




─敵か…味方か…




クリスの知り合いだからと言って安易に味方と思うのは危険な気がした。




彼からそんな話は聞いていなかったし、バチカンが自分達をバックアップしてくれるとも考え難い。




『ここの惨状を見た時から不思議だったんですよ。…クルースニクの仕業じゃないのは明らかでしたから。』




ニックはもう逃げられないと感じた。




仮に逃げられたとしてもバチカンを敵に回す行為は自分達の首を締めるだけだ。




『はぁ…判ったよ。どうすれば見逃してくれる?』




『見逃す?…ふふふ…見逃すも何も、私達は何も見ていませんよ。』




『ただ惨状を見ただけです』と言うとその男は観客席から競技場へと飛び降りた。




『あれは誰の仕業ですか?』




『…それを知ってどうするの?』




男の見下したような態度に負けじと睨み返す忍。




『事と次第に寄っては“排除”します。』




『は…“排除”…?』




その言葉に忍の顔色が青ざめていく。




潤は忍を庇うように男の前に立ち塞がった。




『お言葉ですがそれは不可能でしょう。』




潤の言葉に男の眉がピクリと動いた。




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