とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『…随分と自信がおありのようですね。我々の組織を知ってて言って居るのですか?』
『いえ。ですが“彼”を排除しようなど…貴殿方こそ“彼”を知ってて言っているのですか?』
無表情だった男が潤に不機嫌そうな顔をした。
相変わらず潤は微笑み、余裕すら感じる。
─“形勢逆転”…?
ニックは潤が居て良かったと内心ホッとしていた。
『ついでに言わせて頂きますが、貴殿方の組織とやらはたかが狼人ゴトキに何をやってるんです?』
『なっ…!?』
『あれだけ好き勝手に暴れさせておいて、“彼”を排除などふざけた事を言わないで頂きたい。』
『きっ…貴様!我々を愚弄するのは教皇を愚弄するのと同じ事だぞ!!』
『愚弄?…ふふふ…たかが人間のクセに厚かましい。』
潤の足元から黒い霧が噴き出す。
忍は慌てて潤に声を掛けたが『忍様は黙っていてください』と一喝された。
『身を弁えろ、愚かな人間共!!
我が主人を排除すると言うならば、今すぐ我が貴様らを灰にしてやる!』
ガタガタと震え出した男を見て忍は『駄目!!』と叫んで潤を押し留めた。
『駄目よ!そんな事右京は望んでない!!』
冷たい目をした悪魔が忍を睨む。
次第にその冷たさが消え、いつもの優しい瞳で忍を包んだ。