とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『人間よ、彼女に感謝するがいい。』
そう言ってから忍の頭を撫でると彼は姿を消した。
はぁぁぁぁ…と大きな溜め息をつく忍とニックに、男達はただ呆然と立ち尽くすだけだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
二度寝をした右京が目を覚ましたのは昼近くだった。
『おはようございます。右京様。』
ベットの向こう側から聞こえた声に上半身を起こすと、ダルそうにその人物に目をやる。
『…なんだ、潤か…』
偉そうにソファに腰を掛けて足を組んだ潤が不機嫌そうに右京を眺めている。
『…機嫌悪いな…』
『当たり前です。久しぶりに人間に殺意が沸きました。』
『…そりゃ穏やかじゃねぇな…』
そう言いながらサイドテーブルに置いてあったタバコに手を伸ばす。
『…で?何があった?』
タバコを噴かしながら言う右京に潤はコロッセオでの一件を話し出した。
『…つまり、そいつらは俺を盾に脅しをかけて来たのか?』
『早い話がそうです。忍様が止めなかったら、多分殺してました。』
─あのじゃじゃ馬が…!
毎度無茶をする忍に溜め息が溢れた。