とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『無鉄砲な所は誰かにソックリですよ…』
『…まさか俺じゃねぇよな?』
『右京様以外に誰が居るんです?』
苦笑する右京を潤は『笑い事じゃない』と言いたげに睨んだ。
『にしてもバチカンが動くとは思ってたけど、思ったより早かったな。』
『はい。ですがコロッセオの秘密については知らないようでした。』
『聖杯については何か言ってたか?』
『あれはやはり彼等が保管しているみたいです。』
…となると、益々バチカンを敵に回す訳にはいかない。
『忍とニックはそいつらとなんて話してた?』
『忍様が“取引”を持ち掛けました。』
潤の言葉に持っていたタバコが右京の手から滑り落ちた。
慌てて拾い上げて灰皿に押し付ける。
『…悪い…よく聞こえなかった。…忍がなんだって?』
『“取引”を持ち掛けたんですよ。まったく!大した方ですよ、彼女は!』
─なにしちゃってんだよ、アイツは!!
ガックリと項垂れる右京に潤は憐れみの眼差しを向けた。
『…判りますよ、ワタクシも同じ気持ちですから…』
『全然嬉しくない…』
『そろそろ戻って来るかと…詳しくは本人から聞いて下さい。』
そう言い残して潤が消えると、右京はガシガシと銀髪を掻きながらベットから出て着替え始めた。