とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
なかなか言い出せない忍に右京のイライラが溜まっていく。
「早く言えよ。」
「…バチカンにこっちの結社が敵対する存在じゃないって証明して欲しくてね…?」
「………」
「ほら、昨日の件とかで右京の事がばれちゃったし…」
「………」
「とりあえず、ここは右京がやっぱそこら辺を交渉したら今後動きやすいと思うのよ。」
「…それは忍の意見?」
右京がそう聞くと忍が俯きながら首を振った。
「…右京にお願いしてみてってニックが…」
「…“ニック”?」
ピクリと眉を寄せる右京に忍が硬直する。
「…お前、何か隠してるだろ?」
さっきから忍の様子がおかしいのも、何か後ろめたい事があるからだとすぐに気付いた。
右京は腕を伸ばして忍の顎を掴み自分の方に近付けると、強張る忍の目が次第に潤んでいく。
「アイツに何された?」
右京はただプルプルと首を振る忍の思考を読む。
段々右京の瞳に怒りが増していく。
─クッソ!…だから嫌だったんだ!
「…う…きょう?」
顎から手を放してそのまま部屋を出て行く右京を、忍は唖然と見送る事しか出来なかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇