とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
忍から預かったデジカメのデータをラップトップへ移し、一枚一枚確認していく。
天井…外壁…観客席…。
現地でも調べたが特に気になる点はない。
ニックは顎髭を擦りながら画像をスクロールさせていく。
その中の一枚でふと手を止めモニターに顔を近付けた。
─…これって…
そう思い掛けた時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
覗き穴から廊下を見ると右京が見えた。
ニックはロックを外しドアを開けた。
…と同時に後ろに吹き飛ばされ床に叩きつけられた。
『なっ!?…おい!いきなりなんだよ!?』
何が起きたのか解らず床に倒れたまま右京を見る。
右京は無言のままニックの部屋に入ると後ろ手で鍵を掛けた。
『…“いきなりなんだよ”…だと?』
あまりの威圧感に思わず息を飲む。
『身に覚えはないか?』
『いや…無くもない…かも?』
にじり寄る右京にニックは後退する。
別に声を荒げるわけでもなく、淡々と話す右京。
そして言い様のない危機感を感じた。
『待て待て!!は…早まるな!』
『覚悟は出来てるだろうな…?』
風もないのに右京の銀髪が靡く。
そして彼の両目が紅く煌いているのが見えた。