とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ニックが感じたのは、まさに“生命の危機”だった。
よくわからない汗が身体から噴き出す。
異様に喉が渇きゴクリと唾を飲んだ。
『お…俺の言い分も聞いてくれ!』
『…10秒やる。早く言え。』
『じゅっ…10秒!?短くないか?』
『あと8秒。』
『わわわわ!!待て…!悪かった!!』
『あと4秒。』
『か…彼女が気の毒に思えて…!!』
『10秒…経…過!!』
右京はそう言いながらフルスイングでニックを殴り飛ばした。
ドゴォッ!!と鈍い音と共に『う゛っ!!』と呻きながらニックが再び床に倒れ込んだ。
『まだ言いたい事があるか?………無さそうだな。』
正確には言えないだけだ。
『じゃあ俺の言い分だ。“次、忍に手を出したら殺す。”…判ったか?』
返事も出来ない程の激痛にもがくニックをソファに座らせると『殴って悪かったな』と言って、右京は何事も無かったように出ていった。
─こ…殺されるかと思った!!
暫くその場を動けず、ソファに身を預けて天井を見つめる。
罵倒され殴らるだろうとは思っていたが、右京は罵るような事をしなかった。