とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
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忍は“怪しい”と思った。
もちろん右京の事だ。
自分もあんな事があった手前、立場的にしつこく問いただせないのが悔しい。
結局、のらりくらりとかわされ怪しい点は怪しいままだ。
不満そうに右京をジッと見ていると「見つめないで」と頭を撫でられた。
─見つめてんじゃなくて睨んでんですけど…。
右京はコーヒーを注ぐと忍に手渡した。
「で?“取引”は俺何すればいいの?」
「バチカンの組織の人に“敵対してません”って事を証言して欲しいの。
…でも嫌なら断っていいんじゃ…」
「いや、いいよ。ニックの考えてってのがムカつくけど。」
「…ムカついてんだ…」
「そりゃそうだろ。俺の忍に手出しやがって…!…でもさっき一発殴って来たから少し気が晴れた。」
当然のようにサラリとそう言う右京に忍が「殴ったの!?」と驚く。
「そんくらい許せよ。手加減はしたし。」
…当たり前だ。
右京が手加減しなかったら彼は今頃この世に居ないだろう。
「その組織にはどう接触する?」
「今夜0時にコロッセオよ。クリスが一緒に行けば向こうが気付くだろうって。」
それまでに出来ればコロッセオの秘密について何か解ればいいのだが…。