とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
騎士修道会
◇◇◇◇◇◇◇◇
夜も更け、コロッセオは闇に包まれていた。
時折雲の切れ間から顔を出す月の明かりだけ頼りだ。
『そろそろ時間です。』
部下にそう声を掛けられ、ポケットから懐中時計を出し時刻を確認する。
─0時まであと5分か…。
彼…フィリップ・オラルは昼間のやり取りを思い出す。
ここで遇った二人組は東洋人の女と、イギリス訛りの英語を話す白人だった。
彼らは自分達を“記者”だと言っていたが、オラルはそうは思えなかった。
第一に、昨晩ここで繰り広げられただろう死闘の数時間後にタイミング良く現れた事。
第二に、奇妙な黒髪の青年がその“記者”と一緒に居た事。
─彼は人間じゃなかった…。
自分に向けられた殺気はまるで“悪魔”を連想させた。
そしてその青年は昨晩このコロッセオに居ただろう人物を崇拝していたようだった。
色々と納得がいかない。
東洋人の女は『敵ではない』と言っていた。
こちらとしても敵でない事を祈る。
現在ただでさえ数の少ないクルースニクを失いたくなかった。
『彼に会えばわかります』
女が言ったその言葉をオラルは信じてみたいと思った。