とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
─この男…信じていいのか…?
注意深く観察していたオラルの前に手が差し出される。
男はフードを脱ぐと、風に銀髪を靡かせてオラルに人懐っこい笑顔を向けた。
『ウキョウ・クロサキ。あんたは?』
『…フィリップ・オラルだ。』
オラルは右京の手を握り返すと、『よろしく』と言われ戸惑う。
柔らかい雰囲気…。長身で端正な顔立ちだ。
─この男が“ベルセルク”…?信じられない。
『ルー・ガルーは出なくなったろ?』
『ああ…ピタリとな。』
『って事はやっぱりバフォメットの指示か…』
首を傾げるオラルに右京は昨日の出来事と、自分達が何を追って居るのかを話し出した。
『なるほど。それで“聖杯”を…』
『あれは人間界にあってはいけない代物だ。悪いが回収させてもらう。』
『…ちょっと待て!簡単に言うな!…しかも人間界って…どうするつもりだ?』
右京がクリスを見ると首をすくめる。
『摩り替えさせてくれ。』
…なんだって?
『クリスの店にそれらしいのがあるだろ?黙って摩り替えちまえよ。』
『…右京…とんでもない事をサラッと言うなよ…』
半眼で睨むクリスに『いい考えだろ?』と右京は口角を上げた。