とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『俺達としてもバチカンを敵に回したくない。ここは穏便に済ませたい。』
『…仮に摩り替えたとして、本物は何処へ持っていくんだ?』
『“本来在るべき場所”…かな』
『…エルサレムか?』
『ははは!面白い事を言うな~』
クスクス笑う右京をオラルは訝しげに睨む。
『あれは“天界”の物だ。お前達人間の所有物じゃない。』
『…“天界”だと…!?お…お前、狂言も大概にしろ!』
『狂言じゃないさ。あの杯はイシス様の所有物だ。』
─イシス…?女神イシスの事を言ってるのか?
『…右京…君は…何者だ?』
『…聞かない方がいい…』
そう言ったのはクリスだった。
『…特に騎士修道会のお前達はな。』
『ああ~…そうかもな…』
右京は何かを納得したような顔をした。
『服でも脱いでやったらどうだ?』
『え~…しゃあない。大サービスだからな!』
ブルゾンをクリスに渡すと中に着ていたTシャツを脱ぎ始めた右京を、オラル達は唖然と眺める。
褐色の肌…。
割れた腹筋…。
腕に刻まれた不思議な模様のタトゥー。
目を奪われたのはその完璧な肉体美だけではなかった。
彼は背中にある大きな傷…。
それは彼の肩から腰に掛けて左右対称に刻まれていた。