とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
そして彼は『もがれた』と言った。
オラルの部下は酷く動揺し、『何を…?』と聞いた。
『それは想像に任せるよ。』
─この男は“人間”じゃない。
それだけは確かだ。
もし自分の考えが正しいとすれば、彼の申し出を断る事が出来ない。
『…判った。だがこちらとしては昼間の二人には言ったが、それなりのリスクを負う事になる。』
『“取引”…だろ?』
『判ってる』と言いながら右京は耳に何かを差し込んだ。
─…イヤホンか?
そして異国の言葉を口にした。
─これは…中国…いや、日本語だ。
そういえば東洋人の女が居た。
右京はクリスに日本語で何かを言っている。
話している内容は解らないが、何かを指示しているらしかった。
『ちょっと手を貸してくれないか?』
突然そう振られて手招きする彼について行くと、競技場に降り鉄格子の前で止まった。
『仲間が見付けたんだけど、コロッセオには“地下”が存在したんだ。』
『馬鹿な!…コロッセオは機材を使って検証済みだ!』
『ここの地脈は鉄を含んでる。…残念ながら磁場が発生して機械は当てにならないよ。』
ことごとく今まで信じていた物が偽りと思い知らされる。
オラルは思わず『“厄日”だ』と呟いた。