とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
コロッセオの下に地下があるのが発覚したのは、人力稼働式の“エレベーター”が存在していたのが発端だったらしい。
その構造は滑車を使った至って単純な物だったが、古代ローマ時代の産物にしては大掛かりな装置と言えた。
『今その地下に二人潜ってる。磁場のせいで連絡が取れないけど…。』
右京はオラル達に『これを動かすのに手を貸してくれ』とその装置を指差した。
真っ暗で手元すら見えない中での作業になる。
『右京、灯りをつけろ』
クリスが言うと辺りが一気に明るくなった。
記憶が正しければ、この場所に電気はない。
不思議に思って灯りを見つめる。
『オラルさん、あれって…なんでしょうか…?』
『お…俺に聞くな…。』
部下にそう切り返す。
そして4人で装置を動かした。
エレベーターが持ち上がり、床との間に隙間が出来、クリスはそこにブロックを挟んだ。
丁度人が一人くらい入れそうだ。
『俺がアイツらを迎えに行く。』
そう言い残して右京がさっさと隙間に身を滑り込ませた。
『…彼は大丈夫なのか?』
『大丈夫だろう。死にはしない。』
相変わらず何を考えているか解らない表情でクリスが答えた。