とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
オラルがバチカンに戻ったのは夜明け前だった。
聖堂で祈りを捧げてから自室に戻ったが眠れそうになかった。
コロッセオでの出来事が全て夢だったら…とさえ思ってしまう。
あの後地下から右京は2人の人間と一緒に戻って来た。
その内のひとりは昼間会った青年で、彼はオラルの顔を見るなり得意気に『見つけましたよ』と笑った。
それは石板3枚からなる戒律が書かれた大きな石碑のようなものだったらしい。
…らしいと言うのはまだ見ていないからだ。
オラルは受け取ったSDカードを手の平で弄びながら意を決してPCの電源を入れた。
─休息日なのに休めない。
最初は戸惑いがちに見ていた画像だったが、気付けば画面にのめり込んでいる自分がいた。
意味がありそうで脈絡のない文章…。
わざわざあんな所に隠してまで後世に伝えたかったのはなんなのか…。
─いや、これ以上知らない方がいい。
数日後、オラルは彼等に聖杯の摩り替えを承諾すると伝えた。
『こんな無茶は今回限りだ。』
任務の後始末ならまだしも、バチカンで洗礼を受けていながらバチカンに背く行為に悩んだ末出した結論だった。