とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
─…この人、確か歓迎会の時に私を口説いて来たんじゃなかったっ!?
それを思い出して急に危機感が湧いた。
…と同時に自分の携帯が震えて着信を知らせているのに気付いた。
かなりナイスタイミングで、それを取るフリをして「すみません」と松山の手を退けた。
「…もしもし?」
「忍?…忘年会楽しんでる?」
「…楽しめると思う?」
「ぷっ…大変そうだな?…そこの旅館って老舗の中庭がある所だろ?。」
「えっ!?そうだけど?」
「判った。じゃあ、また後で。」
そう言って切れた電話を眺め、忍は首を傾げた。
「電話は彼氏?」
「はい…何か意味不明な事言ってて…」
「彼も心配してるのかも。…俺みたいに君を口説く輩が居るから…」
「…っ…」
思わず返す言葉に詰まる。
突然後ろの襖が開いたかと思うと、松山と自分の間に見覚えのある腕が現れた。
─……えっ!?
「そう。あんたみたいな輩が心配でね…」
「えええっ!?…なんで居るの!?」
いたずらっ子のように忍を見て笑う右京を唖然と見つめる。