とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ユーリ達の村は近年出稼ぎによる過疎が進んでいるらしく、村人の殆どが老人と子供だった。
若者といえば、ユーリ達兄弟と数件先に5人居るかいないかと言った具合である。
ウキョウを助けてくれたのもユーリ達で、感謝してもしきれないくらいだ。
『ユーリ!』
馬車の荷台で大樽と奮闘する彼を見付けてウキョウが駆け寄るとユーリは屈託のない笑みを浮かべた。
『ウキョウ、すまないんだけど運ぶのを手伝ってくれるかい?』
『お安い御用だ』
ウキョウはユーリが降ろした大樽をひょいと担いで酒場の中へと運ぶ。
酒場の亭主は白い髭を触りながら『助かったよ』と微笑んだ。
『ウキョウ、もう平気なの?』
大樽を担ぐウキョウをコーディが心配そうに見つめてそう言うと、ウキョウは彼の頭をクシャッと撫でた。
この近くで倒れて居たウキョウは全身傷だらけで助からないのではないかと思う程重症だったらしい。
『俺の身体は頑丈にできてんだよ。』
そうウキョウが笑いながら言うとコーディも安心したように笑った。