とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
不審に思いウキョウが足を止めるとユーリも立ち止まった。
『…なにしてんだ?…あれ…』
その人物は一眼レフを首から下げ、ユーリの馬にシャッターを切っていた。
『…カメラマンかな?』
黒髪に黒い瞳のアジア系のその男はこっちに気付いてニコッと笑った。
『綺麗な馬だね~君の馬かい?』
『ああ…そうだけど…』
そう言ってユーリが近付くと男は『勝手にすまなかった』と頭を掻いた。
『僕はフリーのカメラマンをしていて、あちこち旅をしてるんだよ。』
『なんだ…てっきり泥棒かと思ったよ。どこから来たんだ?』
『日本からさ。』
『日本…』
その単語を聞いた途端、ウキョウが小さく唸った。
『ウキョウ!?大丈夫か!』
ウキョウが『ああ』と答えるとカメラマンはちょっと驚いたような顔をした。
『こりゃ驚いた!日本の名前みたいだ!』
『…え?』
『日本語だとこう書くんだ。』
男はしゃがんで地面に小石で“右京”と書いた。
『…“右京”…』
ウキョウの額に冷や汗が浮かぶ。
その異変に気付いたユーリは馬車に乗るよう促した。
『彼は…大丈夫かい?』
日本人カメラマンは困惑気味な表情を浮かべてユーリに聞いた。