とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京が居ると言われた正確な場所が判らない為、土地勘のない自分達はガイドを頼むのが一番の近道だ。
ところが、内陸部へのガイドは現地で探してくれと門前払いを食らった。
『ここ最近、観光客が増えててね…内陸部は山だから、一度ガイドに行ったら数日間は戻れないでしょ?それは困るんだよ。』
申し訳なさそうにそう言う黒人を見て二人は何も言えなくなってしまった。
『…わかりました。じゃあ標高が高い山間の村って何処らへんですか?』
ニコールは持っていた地図をテーブルに広げた。
職員は顎に手をあててうーんと考え込んだ。
『島の西側の山岳地帯は意外と村って少ないんですよ…。東側のデナリーから内陸部を目指した方がいいかもしれないです。』
そう言って指差したのは丁度島の地図で反対側だった。
移動手段は『バスターミナル付近には観光局があるはずだ』と職員が教えてくれたので素直にバスを利用する事に決めた。
翌日興奮気味で早く目が覚めてしまった忍は、バルコニーから街並みを見下ろす。
「わぁ…綺麗…」
思わず感嘆の声を漏らした。
あまり天気は良くなかったが、海に薄く靄がかかってる。
それが余計に辺りを幻想的な景色へと変えていた。