とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京もこの景色を見ているのだろうか…
ぼんやりそんな事を考え、会いたい気持ちに拍車がかかった。
でもかなり近くまで来てるんだと思うと期待に胸が膨らむ。
右京が消えた日からしばらくは“自分は捨てられたのか”と考える事もあった。
もう自分の事などどうでもよくなってしまって、わざと避けているんじゃないか…
そうやって自分で自分を追い込んでは傷を深くした。
その度に周りの皆に助けられた。
親友のセリはもちろん、axleの人達や家族も…皆が忍を励まし、時には叱ってくれた。
忍は彼らの為にも右京を探さないとならないのだ。
「よし!頑張るぞ!」
自分自身に言い聞かせる様な独り言を言うと忍はバルコニーを後にして部屋に戻って行った。
その後すぐに起きたらしいニコールから内線電話が来た。
『マリーナで朝食なんてどうだい?素敵だろ?』
『そうですね…』
相手がニコールじゃなければ尚素敵なのだが…
ロビーで待ってると言うとニコールはさっさと電話を切る。
些細な事なのだが、こっちの都合や考えを無視したニコールのこういった行動が忍は苦手だった。
「…いい人なんだけどね…」
だから誰も彼の担当をやりたがらないのだろうと忍は改めて思った。