とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ホテルに戻った二人は手早く荷物をまとめてチェックアウトをした。
バスターミナルでチケットを購入してデナリーへ行くバスを待つ。
『午前中にはデナリー区に入れそうだね。』
『意外とスムーズで良かったですね!』
『この調子なら今日中に山間の街まで行けるんじゃないか?』
『ガイドが見つかれば…ですけど…』
忍の指摘に『そうだった』とニコールは溜め息をついた。
『まぁ、なんとかなるよ!』
そう言うニコールを忍は軽く睨んだ。
もしかしたらこの人は“ポジティブ”じゃなくて、ただの“楽天家”なんじゃないか…
そう考えるとちょっと不安になって来た。
忍の不安にまるで気付かないニコールは『バスが来たぞ!』と立ち上がると、二人分の荷物を持ってさっさと搭乗口へと向かった。
ここまで着て『考えさせて』とも言えず、戸惑いながらもニコールの後を追う。
「…今度からニコール任せにするのは止めよう…」
忍の呟きにニコールは『何か言った?』と振り返った。
『独り言ですので気にしないでください。』
そう答えてバスへと乗り込んだ。
カストリーズからバスに揺られて2時間程でデナリーに着く。
道中窓の外の景色を眺めていたので意外と早く感じる。