とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バスを降りた忍は伸びをして腰を叩いた。
『大丈夫かい?』
『はい…シートが思ったより硬くて…』
『ハハハ…でもバスがあるだけ感謝だよ。』
ニコールはそう言いながら観光局を目指した。
カストリーズとはまた違う街並みを忍はキョロキョロと見渡す。
『シノブ!はぐれないでくれよ?』
その声に『はーい』と返事をしてニコールを追いかけた。
カストリーズで聞いた通り、バスターミナルから然程遠くない所に観光局はあった。
ニコールに続いて建物に足を踏み入れる。
カストリーズよりこじんまりした観光局で、職員は自分達に気付いて頭を上げた。
ガイドを頼みたいと率直に言うと職員は何処かに電話をかけてくれた。
『ここから西に車で30分程行った所に小さな街があるんですけど、そこの酒場に行ってみてください。』
酒場は人が集まって来るからガイド役を見つけるならまずは酒場らしい。
『ただスコールが来そうなので、過ぎてから行った方がいいかもしれないですね~…』
確かに今にも降りそうな天気だ。
二人は職員に礼を言って観光局を後にした。
『あの人はああ言ってたけど、先に向かって現地で待たないか?』
この時はつい気が逸っていて、忍は『そうしましょう!』と言ってしまった。
それが間違えだったと後悔したのは後々になってからだった。